2025.06.06
《column.25》雨の日も革製品を使うために

コラム・25
雨の日も革製品を使うために
キソラのコラム第25弾となる今回は『雨の日も革製品を使うために』と題して、これから訪れる梅雨の時期にも安心して革製品をお使いいただくための秘訣をお伝えします。
春から夏の季節の変わり目に訪れる「梅雨」。今年2025年は、平年並みか平年よりやや早く始まり、早く終わると予想されているといいますが、6月を境に平均約40日ほど雨や曇りの日が続くとされています。そんな梅雨の時期に革製品を使うのはなんとなく躊躇ってしまうもの。その理由は何よりも「水」が革にとって天敵であるためです。そんな天敵と上手に付き合っていくために、関係性と対策を理解することが大切です。コラムを一読し、梅雨の時期も革製品をお楽しみいただけると嬉しいです。

革にとって水はまさに《天敵》
一般的に革にとって水は天敵とされています。雨降りによる水シミや、バッグの中で飲み物の蓋が開いてしまい内側から起きる水シミなどトラブルの要因は様々。そのいずれも革製品にとっては大きなダメージとなります。
水は革の繊維をつたって円状に染み込んでいきますが、その際に革に含まれる染料・油分・汚れを、染み込んでいく方向に掻き出していきます。そして円形に広がった先でそれらが乾燥することでシミになります。面で染みてしまう場合もあれば、周りの縁だけが跡となり残ってしまう場合などそのシミの種類も様々です。


革にとって水は必要
皮が革として生まれ変わる工程では沢山の水を使用します。また、革となった後でも人間の肌と同様に油分と水分の絶妙なバランスが保たれることで革本来のポテンシャルを発揮します。本来、革にとって水分は無くてはならない存在なのです。しかし水は天敵でもあり、シミになるトラブルには「染料」「油分」「汚れ」が大きく関係しています。その関係性をきちんと理解することが大切です。
水に濡れてしまった時、何よりも大切なのはそのシミを放置しないこと。対策、予防をすることはもちろんですが、対処の方法を知っておくことで、臆さず雨の日も革製品をお使いいただけます。次のセクションではそのあたりについてお伝えします。

突然の雨や梅雨時期、水をうっかりこぼしてしまった場合等、いついかなる時もトラブルやハプニングは防ぎきれないものです。しかし前述した通り革製品にとって水は天敵で、できる限り避けながらご使用いただくことをおすすめしております。その上でもやはりオールシーズン革製品を使ってほしいという願いもあり、こちらのセクションでは雨や水濡れに関する対策をお伝えします。

上記の写真は染料仕上げの革素材に水がかかった場合の「革そのままの状態」と「撥水スプレーを吹きかけた場合」の違いを示したものです。前者は革に水分が浸透し水滴部分が濃くなっているのがわかります。対して、後者は水を弾いているのがわかります。どちらも軽度なものであれば時間の経過とともに乾燥して目立たなくなりますが、前者は円状の縁を以って跡になったり、水分を染み込んだ部分がぷっくりと水脹れのような状態になることもあります。
2週1度の撥水スプレー
雨や水シミにはプロテクターアルファ(撥水、防水スプレー)を吹きかけるのが効果的です。これは雨や水だけでなく汚れの付着を防ぐ効果もあります。気になる部分だけでなく、バッグや財布の全体に満遍なく吹きかけ、雨の日だけでなく、2週に1度を目安に定期的に吹きかけることで、より一層効果を発揮します。撥水スプレーは膜を張る形となるため、総合的なお手入れを行う場合は、手順の最後、仕上げの段階で吹きかけることをおすすめしております。

plus α
撥水スプレー
布にも革にも使えるオールラウンドタイプの防水、防汚、撥水スプレーを全体的に吹きかけて、革の表面をコーティングします。使用する30分前にかけると効果を発揮します。使用時は製品から30cmほど離れた位置から全体に満遍なく振りかけることをおすすめしております。一時的に色が濃く出る場合がありますが、しっかり乾かすことで 元通りの風合いになります。 よく乾かしてからご使用ください。
※炭酸ガスを使用しているため、振らずにご使用ください。
月に1度の定期的なお手入れ
2週に1度の撥水スプレーに加えて、革製品の総合的なお手入れは使用頻度によっても異なりますが、月に1度程度おすすめしております。
革製品のお手入れは大きく分けると【 汚れ落とし ▶︎ 栄養補給 ▶︎ 乾拭き ▶︎ ツヤ出し +α(撥水スプレー)】4ステップ+αと至ってシンプル。kissoraのアイテムはこれらの手順を踏んだお手入れを行っていただければ、より長く革製品をお楽しみいただけます。月に1度を目安に定期的なお手入れを推奨しておりますが、「忘れてしまってもやらないよりは良い」ので、思い出した時にぜひ実践いただければと思います。


step.01
汚れ落とし
まず初めに、ワークホース(馬毛)ブラシなどで表面やステッチ、パーツの隙間に入ったほこりや小さなゴミを落とします。こうして革をフレッシュな状態にすることで、栄養分が十分に入り込みやすく、お手入れ効果も長持ちします。特にステッチ周りのほこりを放放置しておくと、カビが生えることもあるのご注意ください。

step.02
水分、油分補給
デリケートクリームで、革に「水分」と「油分」を含んだ、潤いと栄養を補います。これは人間で例えるなら化粧水や乳液のようなもの。ポリッシングコットンでゆっくりと円を描くように塗り込んでいきます。革の乾燥を防ぎ、擦れなどによる細かな傷も目立たなくなるので、よりよい革の状態を保つことができます。

step.03
乾拭き
ポリッシングコットンのクリームがついていない乾いた部分で乾拭きをし、革についた余分なクリームを取り除きます。また、乾拭きをすることによってツヤを出すことも可能です。

step.04
ツヤ出し
ケアの仕上げにもう一度全体にブラシをかけます。ブラシを使用し摩擦を加えることで、全体の質感を整えながらツヤを出す効果もあります。

plus α
撥水スプレー
前述でご紹介した方法と同様、20~30cmほど離れた位置から全体に満遍なく振りかけます。使用する30分前にかけると効果を発揮します

キソラのYouTubeでも「キソラがおすすめする」ベーシックなお手入れをご紹介しています。キソラの革製品はお手入れを重ねて使い込んでいただくことで、より魅力を発揮します。ぜひ定期的なお手入れと共に製品をお楽しみください。

革製品に水が染み込み、時間が経過し定着してしまった場合、完全に元の状態に戻すことは基本的にはできません。しかし、前述した通り定期的なお手入れを行っていたり、アフターメンテナンスにより目立ちにくくすることは可能です。こちらのセクションでは、すでにトラブルが起きている場合、気付かぬうちに水濡れによるシミができていた場合の対処法をご提案します。
・お手入れを定期的に行い、使い込むことでシミを目立ちにくくする
・お手入れに長けた者に入念なケアを依頼する

お手入れ+使い込んで
目立ちにくくする
水シミに関しては、その度合いによりシミの残り方も異なります。アフターメンテナンスでは基本的に『軽減』することしかできません。しかし、アフターメンテナンスをせずに使い続けてしまうと状態が悪化してしまう可能性もあるため、気づいた段階で該当箇所だけでなく満遍なく全体のお手入れを行うことを推奨しております。
また、水シミの影響を受けやすい染料仕上げの素材は革らしい経年変化が発生するのも特徴の一つです。その魅力を味方に、シミを認識しながらもお手入れを繰り返しながら使い込むことで、色が深まり、ツヤが増していきます。それによりシミが目立ちにくくなることも対処法の一つです。

レザーケアマイスターに
メンテナンスを依頼する
キソラにはメンテナンスに長けたレザーケアマイスターの資格を持っている者が在籍しています。お手入れに不安がある方は、お預けいただきメンテナンスを依頼することも可能です。
ただしお手入れも十人十色、対処法にも正解はありません。また、全てのトラブルがご希望通りになるとも言い切れません。しかし、何もせず放置するよりも何かしらの対策を施した方が良いという事は事実です。お困りの際はぜひお気軽にお問い合わせください。

YouTubeチャンネル「kissoraの中の人」では、雨による水シミが革製品に起きた場合の、kissoraの中の人流のお手入れ方法をご紹介しております。どの素材、製品にも活用できる手順ではありませんが、対策の一つとして参考になればと思います。なお、こちらのメンテナンスは、お手入れ作法に長けた者が行っておりますので、不安な方はぜひお気軽にご相談ください。
メンテナンスのお問い合わせ
革製品と付き合うには他の素材よりも少し知識や手間が必要。それでも少しでも気軽に革製品をお使いいただきたい。キソラでは商品の販売に留まらず、その先のアフターサービスにも力を入れております。お手入れ方法の相談や実際のメンテナンス希望等、お困り事がございましたらお気軽にお問い合わせください。
※ご来店でのお問い合わせの際、混雑状況や製品の状態によっては数日お預かりさせていただく場合もございます。あらかじめご了承ください。
InstagramでのDMおよびメールでのお問い合わせの際は状況と状態のわかる写真を添えてください。返信・対応までに土日祝を除き1週間ほど頂戴する場合がございます。

kissoraでは革製品へのお手入れでおすすめしているケア用品を一通りラインナップしております。今回本題となっている撥水スプレーに加えて、デリケートクリームはkissoraでお取り扱いを行っている全ての製品にお使いいただくことができ「水分」と「油分」を補給する目的として十分な効果を発揮します。撥水スプレーの前にデリケートクリームでの基礎的なお手入れをすることで革自体を育てることもでき一石二鳥。守るだけでなく育てる楽しさも実感いただけますと幸いです。
お手入れアイテムのご紹介

栄養補給
デリケートクリーム
KIRD-001: 1,430円 税込
幅広い革製品に使用することができる万能クリーム。皮革に潤いと栄養を与え、柔軟性を出し、しっとりとした質感に仕上がります。

汚れ落とし/ツヤ出し
ワークホースブラシ
KIRD-002: 1,430円 税込
柔らかな毛質が特長の馬毛のブラシで、革製品に付いた汚れを払い落としたり、クリームを塗った後のブラッシングに適しています。

栄養補給/ツヤ出し
クリームエッセンシャル
KIRD-004: 2,090円 税込
ビーズワックス(蜜蝋)のエッセンスを配合したローションで、比較に潤いと栄養を与えながら自然なツヤを与え、同時に表面についた汚れを落とします。

クリーム塗布 / 乾拭き
ポリッシングコットン
KIRD-005: 660円 税込
栄養クリームの塗布や仕上げの乾拭きにおすすめです。起毛しているコットンが余分なクリームを取り除き、より美しく磨きあげることができます。カットして使用できます。

防水・防汚
プロテクターアルファ
KIRD-003: 1,760円 税込
布にも革にも使えるオールラウンドタイプの撥水・防汚スプレー。使用する30分前にかけると効果を発揮します。汚れから守るために、予防として使う方法もあります。※炭酸ガスを使用しているため、振らずにご使用ください。

ケアセット
レザーケアセット
KIRD-006: 2,750円 税込
基本的なお手入れに必要なケア用品がセットになったギフトボックス。お手入れを試してみたい方や、プレゼントにぴったりのアイテムです。

kissoraでは取扱店にてメンテナンスブックを配布しております。基本的なお手入れの手順やお手入れに活用できるケアアイテムを掲載しています。ぜひお手元に置き、お手入れの参考などにしていただければ幸いです。
