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2025.05.02

《column.24》革の表情の一つ:トラについて

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コラム・24

革の表情の一つ:トラについて

キソラのコラム第24弾となる今回は『革の表情の一つ:トラについて』です。
キソラでは、革素材に残る傷跡や色ムラを動物たちの「生きた証」として捉え、廃棄したり、隠すことなく、自然な風合いとして残しています。そんな革素材の表情から今回は「トラ」にフォーカスしてコラムを展開していきます。

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今回メインでご紹介する「トラ」は動物のまさに「虎」の身体に見られる模様のように線や筋が入った模様を指します。製品を作る際の革の裁断方法によって、「トラ」の入り方は縦や横、斜め、薄っすらと入っているものもあれば、しっかりと入っているものまで、「トラ」の中でもその表情は様々です。多くは染めた色に対して濃く入るものが一般的で、キャメルやブラウンなどの淡い色が目立ちやすい傾向があります。

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革の表情の違い

上記は同じキソラのロングセラー アマーレシリーズの2WAYリュックKIOB-017で、どちらも新品の状態、どちらも正規品です。その上で右側の製品は「トラ」が特徴的に見受けられます。本体の色に対して1トーン濃い線が縦に入っています。こちらが革の表情の一つ「トラ」です。こちらは製品のいわゆる柄ではなく、革素材に残る表情となり、製品ごとの個体差となります。

実は…
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トラが入っていると
ラッキー?!

トラは首から肩まわりに多く、曲げ伸ばしを行っていた部位に顕著に見られます。革の品質に問題はなく、むしろトラが生まれる首から肩の部位は、牛の体の中でもしっかりと繊維が引き締まっている部位となるため、他の革の部分よりも丈夫とも言われています。
さらに、イタリアンレザーでは特に価値が高いとされており、あえてトラが入っているものを手に入れるとラッキーと捉える方も少なくないそうです。

革の表情の種類は本当に様々で、オンラインでお求めいただく場合でも、店頭にてご覧いただく場合もそれは同様です。革素材の特性を理解することで、個体差をさらに楽しみ、そのたった一つとの出会いを楽しんでいただけたらと思っております。オンラインでは一例でしかご紹介できないため、ぜひ店頭にてその表情の違いにも着目していただけるとより革製品をお楽しみいただけるかと思います。

キソラ取扱店舗はこちら

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YouTubeチャンネル「kissoraの中の人」では、キソラの定番シリーズアマーレのKIOB-017を例に革の表情の一つである「トラ」について深掘りした動画を公開しております。動画を見ていただくと1枚の革の中にどれだけの表情の違いが表れているのかを見ていただけるかと思います。ぜひ併せてご覧ください。

YouTubeチャンネル「kissoraの中の人」

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本コラムでメインにご紹介している「トラ」の他にも革素材には様々な種類の傷跡があります。私たち人間の傷も擦り傷から大怪我まで、はたまた虫に刺された跡や歳を重ねることでシワになることもあります。こちらのセクションではそんな傷の種類について一部ご紹介します。

トラ

…首などのシワ。首から肩まわりに多く、曲げ伸ばしを行っていた部位

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代表的な革表面の表情のひとつで、首や肩まわりなど、曲げ伸ばしを行っていた部位にできやすいシワの跡です。動物は基本的に四つ足で顔をあげて生活しているため、首の後ろから背中にかけてできやすい跡です。素材としては繊維の締まりが強いため重宝される価値の高い部位ですが、このシワが原因で省かれるケースも少なくありません。kissoraでは積極的に使用している部位となります。

血筋

…皮膚の下の血管が通っていた跡

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血管が近くを通っていた箇所を示している跡です。繊維としては問題がないので、使用していますが、表面に配置するのを避けるなど使用する箇所を考慮しています。

バラ傷

…樹木や他の動物による引っかき傷が治癒した跡

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樹木やほかの動物の引っかき傷が治癒した跡です。基本的には動物が生きている間にケガをしてしまい治癒した跡がバラ傷として残りますが、極端に激しいものや傷のえぐれが深いものなど強度に問題がある場所を除いて使用しています。

かさぶた跡

…怪我による傷にかさぶたができて治癒した跡

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怪我をしてかさぶたとなり、それが治癒した跡が残ったものです。傷は治っていますが、元の肌とは異なる状態になっています。度合いによって使用可否が分かれるもので、穴が空いているものは使用しませんが、皮膚の組織が戻っていて、表面だけ傷やムラがあるような場合は使用しています。

ピンホール

…虫に刺された跡

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虫喰いの穴あるいは虫に刺された跡です。生きている時に虫に刺された跡が残っている場合や生の皮の状態から鞣す工程の中で虫に喰われて跡になる場合があります。一部ではなく、全体に広がっている時もあり、深度とともに見極めながら使用可否を検討しています。

ほくろ

…人間同様、濃さや大きさ、できる部位もさまざま

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人間と同様に牛にもホクロがあり、その濃さや大きさ、できる箇所は千差万別です。天然の証のひとつともいえ、その度合いに準じて使用しています。

コラム2 / 革素材の傷について

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YouTubeチャンネル「kissoraの中の人」でも、実際に牛革の半裁を使用してその中に見られる傷跡についてご紹介しております。ぜひ併せてご覧ください。

YouTubeチャンネル「kissoraの中の人」

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前述でご紹介した傷跡以外にも革素材の表情の差異に見られる特徴として「色の濃淡の違い」が挙げられます。これはキソラがメインに使用している「染料仕上げ」+「素上げ」の素材によく見られる特徴で、革製品の個体差を感じられる理由の一つでもあります。

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革の個体差:色の濃淡の違い

上記の写真は同じKIOB-017のブラウンの製品です。よく見ると左が明るめ、右が暗めに見えるかと思います。これは写真の陰りや光のバランスではなく製品の個体差による見た目の差異です。
同じ一枚の革でも使用する部位によって繊維の詰まり方が異なるため、染色時に色ムラが発生します。そのため、同じ《ブラウン》という色名であっても、裁断した部位によって濃いブラウン、薄いブラウンなどの差異が生まれます。また、今回は全体のトーンで濃さに違いが出ていますが、本体とマチの部分などのパーツ間で濃淡に差を感じられることもあります。濃淡の入り方も全体的に差が出る場合やシミにように見られる場合、グラデーションのようになっている場合等様々です。

染料仕上げ+素上げ調の素材ではこれらの差を均一にすることは極めて難しく、濃淡を均一にすることは表情を均一することと同じで革本来の特徴をなくすことにも繋がります。左右どちらが正解の色という棲み分けはなく、大まかな《ブラウン》のカラーでどの表情が手に届くかと考えていただくことが革製品をより楽しむ秘訣になるかもしれません。革本来の風合いを楽しめる代わりにこのように個体差ができることがあり、それが素材の最大の特徴でもあります。

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革の個体差:部位の違い

日本の場合は首から尻にかけて半分に裁断された状態から鞣しを行い、その半裁の状態からパーツの裁断が行われる事がほとんどです。部位によって使用するパーツへの相性が異なるため、裁断職人はそれらを選定しながら作業を行います。
例えば、腹部にあたる部分は生物の構造上、痩せたり、太ったり、牝であれば子供を身籠る面を鑑みてもわかるように繊維の密度が低いため伸びやすく、強度への懸念が大きい箇所となります。そのため製品として使用することを避ける場合が多く、必然的に主に使用されるのは肩から腹部の中心にかけた部位が多くなります。

セクション1でご紹介した通り、肩から胸周りには「トラ」が発生しやすいため、製品に入っている可能性が高まることとも関連付いています。一つ一つ職人の手で仕上げられるキソラの製品は、全て人の目で精査され、製品として欠損がないものを使用するように心がけて製作しております。
革素材の特徴も理解しながら、キソラの製品を手に取っていただけると我々も大変嬉しく思います。

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アマーレシリーズ
リュックサック
KIOB-017
W290×H300×D110mm
21,450円 税込

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キソラでは革素材の特性を最大限に生かした製品づくりを行っています。傷や色ムラを極端に排除して廃棄してしまうことは、「生きた証」を受け入れずに、革の廃棄を増大させてしまうことにも繋がります。傷や色ムラをネガティブなイメージとして捉えるのではなく革素材の「表情」として捉えることで、より革製品をお楽しみいただけるかと思います。
また、そういった革素材の特性を最大限に生かした製品に起こる特徴として「経年変化」があります。経年変化は革製品をお使いいただく上での醍醐味とも言え、時間をかけて使い込むことで色の濃さや艶、表情に変化を生じさせます。

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キソラ製品の経年変化

上記はキソラ製品のシリーズごとの経年変化チャート(2025年4月版)です。キソラではシリーズごとに使用する革素材、仕上げ方法を変更しているため、経年変化の感じ方にも違いが発生します。お使いいただく上で、どのくらい経年変化を実感したいか、革らしさをどこまで求めるかの参考になりましたら幸いです。
また、チャートの右上に行くほど、経年変化を味わえると同時に、定期的なお手入れも必須になっていきます。革が革らしく育つには「お手入れ」が必要不可欠。今回の本テーマとなっている「トラ」もお手入れを重ねて一緒に育てていくことで味わいを増していきます。革製品の特性とともにお手入れの重要性もセットで取り入れていただき、革製品との生活をお楽しみください。

革製品のお手入れは大きく分けると4ステップ+α。【 汚れ落とし ▶︎ 栄養補給 ▶︎ 乾拭き ▶︎ ツヤ出し +α(撥水スプレー)】です。kissoraのアイテムはこれらの手順を踏んだお手入れを行っていただければ、より長く革製品をお楽しみいただけます。ご不明点等ございましたら、SNS等でのお問い合わせ、YouTubeのコメントにて受け付けておりますので、お気軽にお申し付けください。

item line up

kissoraの革製品へのお手入れでおすすめしているケア用品をラインナップしています。特にデリケートクリームはkissoraでお取り扱いを行っている全ての製品にお使いいただくことができ「水分」と「油分」を補給するのに十分な効果を発揮します。

デリケートクリーム
KIRD-001
1,430円 税込
馬毛ブラシ
KIRD-002
1,430円 税込
プロテクターアルファ
KIRD-003
1,760円 税込
クリームエッセンシャル
KIRD-004
2,090円 税込
ポリッシングコットン
KIRD-005
660円 税込

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