2024.11.29
《column.18》made in JAPANが誇るもの
コラム・18
made in JAPANが誇るもの
キソラのコラム第18弾は「made in JAPANが誇るもの」です。今回のコラムでは『ものづくり』にフォーカスし、私たちkissoraのお財布を生産している工房で、私たちが見て感じてきたことのほんの一部をお伝えさせていただきます。こちらのコラムはシリーズとして3章に分けてご紹介して参ります。ぜひご一読ください。
日本には「職人気質(しょくにんかたぎ)」という言葉があります。この言葉は「自分の仕事にプライドを持ち、丁寧な仕事をする」「自分の技術を探求し、自信を持ち、金銭や時間的制約などのために自分の意志を曲げたり妥協したりすることを嫌い、納得のいく仕事だけをする傾向」「いったん引き受けた仕事は利益を度外視してでも技術を尽くして仕上げる傾向」等を指します。
日本の武士の清貧精神に影響を受けて生まれた「職人気質」という言葉の下に生きる人々は日の目を浴びることは少なかれど、堅実に日本の伝統を支える担い手として存在し続けています。
「製品づくり」においては大きく分けると「裁断」「漉き」「細かなパーツへの下仕事」「縫製」「組み上げ」の作業に分かれます。日本の職人の世界は基本的に分業制で、その一つひとつに熟練された専門の職人が存在しています。つまり、一人で完結する仕事ではなく、分業、協業で成り立っており。そのどれかが欠けても製品は出来上がらないのです。
キソラの製品は一つひとつ熟練された専門の職人によって製作されています。そこには機械化された生産や、海外の大きな工場でライン化され流れ作業で生産していくものづくりにはない、細かいところまで品質や仕様にこだわり、より品質の良いものを作ろうという丁寧なものづくりへの精神が込められています。
前述したように日本のものづくりには”分業制”の体制が整えられています。これは17世紀から19世紀頃にかけて工業の歴史の中で発展し《家内制手工業→問屋制家内工業→工場制手工業→工場制機械工業》と移行した歩みの中で生まれた伝統的な仕組みです。工業の発展の中でも工場制機械工業ではなく、工場制手工業として「分業性」が取り入れられていることには理由があります。
革を裁断して、革を漉いて、縫製して…その流れの中にはそれぞれの職人がいます。たくさんのプロ=職人が手がけるそれには素材加工する川上から製品を仕上げる川下まで全てがひと繋ぎになっている運命共同体なのです。
つまり、なぜ職人が「分業制」になっているかというと、それぞれの工程に【非常に高い専門性が必要だから】なのです。職人には適正や向き不向きもあったり、一人前になるのに10年以上かかるとも言われており、一つのことを極めることで一つの工程に特化し熟練度の高い生産を可能にしているのです。
クオリティを求めるものづくりにこそ分業制は欠かせず、それに関わる人材は代替不可能な存在です。私たちはそんな職人たちへのリスペクトを常に抱きながら製品づくりを続けています。
伝統と技術を紡ぎ、受け継がれてきた「日本のものづくり」。その誇るべき文化が直面している問題、それが「職人の高齢化」です。
目まぐるしいスピードでトレンドが巡り、流行り廃りを求めたユーザーによって物が溢れる時代となりました。そして、1980年代半ばに始まり幾度の波を経て現在もなお、日本の製造業が中国に進出する動きは本格化しています。それはひとえに世界的な不況とそれに伴う安価なものへの需要の上昇が考えられます。
対して、人の手で一つひとつ生産される「日本のものづくり」は生産するのに時間がかかり、短いスパンで大量生産をすることはできません。また、技術を習得するまでにも大きな時間を要することから現場から若年層が離れてしまうことも現実としてあります。そんな中でも「日本のものづくり」に意義を見出し足を踏み入れる人々を私たちは待ち続けています。
そして、そんな活動に意味・意義を見出し、「日本製製品」への価値を理解していただけることを願っております。
上記の写真に写る道具は工房の熟練職人が実際に使用しているものです。中でもカナヅチは職人がその道を志した50年以上前から使い続けているものだと言います。品質の良いものは長く使い続けることができる。そんな信念とも言える心を体現しているような道具でした。
また、その右手にある電気コテは自作によるものだと誇らしげに教えていただきました。日々ものづくりに従事するにあたり、自分なりの技法も共に磨かれていきます。守破離を超えたそのセンスは唯一無二のアイテムへと生まれ変わり、より品質の高い製品へと仕上がっていくのです。
日本人の高齢化を抱えながらも現在では年齢、性別、国籍を問わず様々な作り手が一つの空間に集い、日々生産に励まれています。日々の中で育む技術やそれぞれの人の工夫は、受け継がれ、今もなお「日本の伝統技術」は受け継がれ続けています。
消費社会の中でも私たちは日本の美意識や伝統技術を活かしたものづくりへの誠意の灯を尊重し、受け継がれてきた「ものづくり」をいつまでも紡いでいきたいと思っています。
日本製のものづくりにこだわり続け、微力ながらキソラの店長も職人のもとで修行。技術を習得して少しでも店舗内に設置した工房を活用しながらユーザーの皆様へのフィードバックするなどお手伝いをしたいと考えています。
取材させていただいた工房にて生産されているアイテムをご紹介させていただきます。
【ディニタシリーズ】
オイルをふんだんに含ませた素上げの国産牛革を使用したメンズシリーズ。ナチュラルなシボをそのまま生かしたワイルドな雰囲気が持ち味で、経年変化によって魅力が増します。2024 A/Wより新たに2型追加され、さらにボリュームアップして展開しています。