2023.11.10
《column.05》あたし、キズだらけなんです…
慌ただしく過ぎていく日々の中で、
何が大切で、何がそうじゃないかを 自分の目で見極め、
一日一日を丁寧に、シンプルに暮らしたい。
そんな日常にそっと寄り添う 「kissora」との生活。
そんなコンセプトを掲げたkissoraが、
皆さまと革との毎日をより豊かに彩れるようにと始まったコラム企画。
革についての知識やひとつのトピックを深く掘り下げた内容をお届けいたします。
ぜひご一読ください。
コラム・05
あたし、キズだらけなんです…
第5弾は「あたし、キズだらけなんです…」です。この度、2023年A/Wの新作としてリリースした「マイアーレ」シリーズは、東京産の豚革を使用しています。豚革は、牛革や山羊革に比べて革の表面の傷やムラが多く、革素材としての均一で安定した品質を保つことが難しいとされてきました。しかし、そのデメリットとして懸念されてきた豚革の特徴を活かし、kissoraらしい取り組みと豚革の魅力をふんだんに詰め込んだ新作をご紹介します。
ナチュラルマークが意味するもの
豚革の特徴として「軽さ」と「キズの多さ」が挙げられます。そのため、キズを隠す為に吟面を擦った「スエード」での利用が一般的です。今回の企画では革本来の風合いを最大に楽しんでいただく為に革の吟面(表面)は一切加工せず「ヌメ革」として利用しています。 豚革特有のキズ、色ムラが激しく製品に現れています。 もちろんヌメ革の為、使い込む程に色が深まりツヤが出る経年変化も楽しむ事ができます。
kissoraでは革素材に残る傷やほくろ、シワなど動物の「生きた証」を廃棄したり隠すことなく、自然な風合いとして残しています。それを『ナチュラルマーク』と呼ぶこともあります。一般的な革製品では、傷や色ムラなどを隠すために革の表面に塗料を重ねて「厚化粧」をさせることがありますが、今回使用している豚革は例えるならどれも「ナチュラルメイク」です。薄化粧の良さは、革本来の良さをストレートに感じることができるという点です。そして、傷やムラなどを避けない分、廃棄する革の量も減るため、サスティナブルにも貢献しています。1つとして同じものはないという価値観が革のあり方をさらに魅力的なものにしています。
メイド・イン・トウキョウ
今回のコラムでご紹介している豚革を使用したアイテム「マイアーレ」は、東京都墨田区で生産されています。kissoraは日本のものづくり文化や日本の職人への敬意を示す意味も込めて一貫して「Made in Japan」を大切にしてきました。そして今回はさらに、我々の拠点でもある「東京」をまさに舞台としたアイテムをリリースすることができました。それを記念して「マイアーレ」のロゴには「Made in Tokyo」と記載することとなりました。
豚革の生産は、明治末期より東京都墨田区で 始まりました。 現在では世界でも有数の生産地となっており、国産豚革の 90%を担っています。 特筆すべきは「マイアーレ」の原材料である「皮」が 100% 国産ということです。 輸入した「皮」を「革」製品としてリリースする「Made in Japan」もさることながら、「Born in Tokyo」とも謳える生粋の「Made in Tokyo」シリーズとして、ここに誕生しました。
豚革アイテム:マイアーレ
マイアーレ バッグシリーズ
豚革のバッグアイテムは全3型。まるで持っていないかのようにとにかく軽く、革を贅沢に一面使用しているので、素材のありのままの魅力をふんだんに感じることができます。内装にも布地などを使用しておらず仕上げられている至極の豚革アイテムです。カラー展開は、キャメル、パープル、グリーン、ネイビー、チョコの全5色。いずれも素晴らしい経年変化を楽しむことができます。
マイアーレ 財布・小物シリーズ
豚革の財布・小物アイテムは、長財布、二つ折り財布、コインケース、ペンケースの全4型。バッグシリーズと同様、ファスナー等の金具以外は豚革のみで仕上げられており、使い込むほどに素材の良さが引き出されていくアイテムです。手元で見れば見るほどナチュラルマークが目を引き、愛着もますます沸いてくること間違いなしです。
「おいしい」のあとは、「すてき」がだいじ
忘れてならないものは「革は、『副産物』である」という事実です。食肉用の動物は、様々な部位が化粧品や医療、肥料などの原材料として活用されています。皮革もその一つ。しかし、豚革の場合は世界的に見ると皮も肉も食用として流通し、皮革素材の原料として利用されるケースが少ないです。その反面、日本では豚の皮を食用として利用する文化がほとんど無く、残された革を廃棄するのではなく、豚革の原料として活用しています。その品質は非常に評価が高く、ヨーロッパをはじめとする諸外国へ輸出され、名だたるスーパーブランドの鞄や靴に姿を変えて、再び日本に戻ってきています。
廃棄するのではなく、革製品に仕立て暮らしに役立てることは、エコロジーな行動といえます。もっと多くの方々に革製品の良さを知っていただき、豊かで持続可能な未来へ、みんなで歩んでいきたい。kissoraはそう考えています。