2024.12.27
《column.20》made in JAPANが誇るもの -判押し編-
コラム・20
made in JAPANが誇るもの
-判押し編-
キソラのコラム第20弾は「made in JAPANが誇るもの」です。シリーズでご紹介している『ものづくり』にフォーカスしたコラム。今シリーズでは最終章となります。今回は「判押し」について。ブランドネームという署名のような大切な刻印をどのようなこだわりをもって押しているのかお話しさせていただきます。ぜひご一読ください。
キソラの製品にはブランド名やロゴがデザインされた刻印が押されています。それらは基本的に革のパーツに「判押し」と呼ばれる工程を経て施されます。
判押しは、熱と圧により彫金を革に押し付けることで施されています。熱は素材によって温度調節され、圧は作業する職人の微妙な力加減によって調整され成り立っています。それらはいつでも一定なわけではなく、革素材の状態を把握し見極め、作業を行う必要があります。
キソラが生産する製品の場合、刻印が押される主な素材である革は、それぞれに特徴が異なり、更には革のコンディションも作業に大きく左右されることから、手作業による施工が推奨されています。手作業であるということは、それを担う職人の細微な感覚が仕上がりに関係します。キソラ製品のロゴが均一に見えるのは、ある程度一定であるように見せているためであり、目を凝らして観察するとそれら一つひとつには差異があることに気づくかもしれません。
ものづくりに携わる人々はある時から「職人」と呼ばれます。それらは人によって時間差はあれど、弛まぬ努力と工夫、試行錯誤の上に成り立ちます。一つのことを続けることは簡単なことではありません。そしてそれに向上心を持ち続けることはさらに容易なものではありません。技術を磨いていくことは才能があるということそのものなのです。
技術を磨いた人は実はおしゃべりな方が多くいます。それは時に手法を伝えているのではなく、人生を語っているようなものでもあるからです。ものづくりのイロハの先には職人が見出したオリジナルのノウハウがあり、実績や時には苦い思い出もあることでしょう。
キソラのロゴの刻印をする職人は、その力加減がいかに重要かを時間をかけてゆっくりと教えてくれました。感覚が付帯するため文章だけではその全てを共有することはできませんが、刻印が美しく均等に押されていることが当たり前ではないことだけは確かでした。
熱と圧により押される刻印は押しすぎると文字やロゴが潰れてしまい、軽すぎると浅くぼやけたロゴになってしまいます。限りある革素材を無駄なく使用するためにも失敗なし、一発勝負で行う作業の連続。そういっても過言ではない技術が日々製品に反映されているのです。
今回はものづくり現場への突撃としてお財布を生産している工房へ伺い、ものづくりの本質に触れてきました。改めて実感したことは「ものづくりは決してひとりではなし得ない」ということです。
製品は革素材を「裁断」し、「漉き」「細かなパーツへの下仕事」「縫製」「組み上げ」を経て成り立ちます。その大まかな作業からさらに細分化され、そのどれにもその道を極めた職人が存在します。本コラムでは「細かなパーツへの下仕事」に分類した「判押し」についてご紹介しました。
製品になる以前に、革素材になるまでにも多くの職人がバトンパスを繋いでいます。時間をかけて技を磨き、製品の一部となって私たちの目の前にあるその仕事を、私たちは心からリスペクトします。そして製品になって皆さんの手に届くそれらが、皆さんの手によって大切に育まれることを嬉しく思います。
キソラの製品を生み出している職人や工房はまだまだ様々。職人の数だけこだわりもあります。またどこかの機会でお話しできる機会があれば嬉しいです。
kissoraのYouTubeチャンネル「kissoraの中の人」では、「皮が革製品になるまで」と題して鞣しの工程から縫製等の製品制作の現場まで、素材が製品になるまでの大まかな流れを動画にてご紹介しております。「ものづくり」というものがいかにひとりではなし得ないものであるかを実感いただけるかと思います。ぜひ動画も併せてご覧ください。
取材させていただいた工房にて生産されているアイテムをご紹介させていただきます。
【サビアシリーズ】
2024 S/Sより新シリーズとしてリリースした「サビア」シリーズ。多量のオイルを含ませた国産の牛革をベースに革の吟面(表面)をサンドペーパーで擦った表情が印象的なアイテムです。裏地を使用せず革素材のみで仕上げており、非常に大きな経年変化も実感していただける革好きにぴったりのアイテムです。使い込むと、驚くほど大きく魅力的な経年変化を味わえます。使い始めはマットな質感ですが時間の経過とともにツヤが増し、手に馴染んでいきます。色は濃く深くなり、ヴィンテージ感が増した印象に変わっていきます。