2024.12.13
《column.19》made in JAPANが誇るもの -裁断編-
コラム・19
made in JAPANが誇るもの
-裁断編-
キソラのコラム第19弾は「made in JAPANが誇るもの」です。前回に引き続いて『ものづくり』にフォーカスしたコラムをご紹介します。今回は「裁断」について。キソラの革製品のものづくりにおいては欠かすことのできない「裁断」の工程について細かく紐解いていきます。ぜひご一読ください。
革は基本的に上部の写真にあるような「クリッカー」と呼ばれる裁断機を使用して裁断が行われます。主に半裁となった革に対して”使用用途”に合わせ、抜き型を用いてパーツごとに裁断されます。業界で最も一般的な裁断機は油圧式で強力な圧力によって間に挟んだ抜き型を押し、刃型になっている抜き型が革をくり抜く仕組みとなっています。
抜き型は鞄や財布で大きさが異なることはもちろん、一つの製品に必要なパーツをすべて用意する必要があるため非常に多くの型を要します。さらに、革は自然由来の素材であるため、傷の有無や度合い、部位の特徴によって、使用用途や適材適所が異なるため、熟練した観察力と知識でそれらを見極め裁断作業を行う必要があります。ブランドのコンセプトや革の仕上げ方によっても左右されるため、マニュアルなどはなく、経験値が鍵を握る作業です。
また、裁断の工程は製品づくりにおける最初の段階のため、傷等の見極めに誤りがあるとその先の作業に差し支える場合があります。はじめの一歩であるからこそ技術と知識が欠かせない重要な作業のひとつなのです。
元々、牛や馬、山羊や豚であった革にはそれぞれ部位があり、お肉と同様にそれらの場所によって名前が変わるほど特徴が異なります。例えば、肩や背中に近い部分は非常に頑丈で伸びづらい特徴があります。対して、腹部や胸部側は人が太ったり痩せたりするのと同様に伸び縮みするため柔らかく伸びやすい特徴があります。
そういった、革の部位の特徴は製品を作る上で大切な要素となります。そして裁断する職人はそれらを見極め必要なパーツを必要な箇所から取り出していくという技術と配慮が必要になります。
さらに、革の表面だけでなく内側だけに傷や痛みが見受けられる場合もあります。一見目に見えづらいものこそ、ものづくりには重要な要素で、細部まで見極め、裁断をしていくまさに職人技が光る作業なのです。
革は有限なもの。限りある資源である革を少しでも無駄なく製品に使用することは革製品を扱うキソラにとってとても大切にしている視点です。
昨今の脱レザーの流れの中で、キソラでは、革の廃棄を減らす事を目標に傷や色ムラなどの革本来の特徴を 生かしたサステナブルなものづくりに取り組んでいます。食肉利用の副産物である革を、可能な限り余す事なく利用しているため、 製品によっては傷や色ムラが目立ちますが、それらはデメリットではなく ひとつひとつの個性であり革本来の表情としてお楽しみいただけると幸いです。
キソラでは、革の個性、革本来の特徴を生かしたものづくりを行っております。特に染料仕上げの製品は、革の表情がより反映されるため、一つひとつの印象が異なります。革らしい個性をぜひ店頭で実際にお手に取りご覧いただけますと幸いです。
キソラ製品の革の表面に見られる表情の例
kissoraのYouTubeチャンネル「kissoraの中の人」では、実際に半裁の牛革を使用して、革に残る傷跡や表情にフォーカスした動画も公開しております。1枚の革から部位や傷の大小を見極め、製品化されています。皆さまが出会うkissoraの革製品に見られる様々な証にどのような所以があるのかぜひ知っていただきたいです。ぜひ動画も併せてご覧ください。
取材させていただいた工房にて生産されているアイテムをご紹介させていただきます。
【ヴァスカボックスシリーズ】
2024年A/Wより加わった新シリーズヴァスカボックス。イタリア ヴィルジリオ社の発色が鮮やかで綺麗な革を贅沢に使用しています。時間の経過とともに色が深まり、ツヤが増し、経年変化の醍醐味を味わえます。内装とのカラーコンビネーションも魅力です。